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この人に聞きたい 「のどと呼吸筋を鍛えて衰えない生活をしよう」 池袋大谷クリニック院長・医学博士 大谷義夫さん

今回はテレビや新聞などでもよくお見かけする、呼吸器内科のスペシャリスト・大谷義夫先生の登場です。東京・池袋にある先生のクリニックは日本一の呼吸器患者数を誇るといわれていて、夜の診療を終えられてからインタビューに応じてくださいました。物腰が柔らかな先生のお話は、呼吸器の大切さがよくわかる興味深い内容ばかりでした。


大谷義夫さん

呼吸器科の医師になる

私の実家は畳屋をしていましたが、テレビドラマの影響もあって小学生の頃から医者になりたいと思っていました。人の命に関わる仕事がしたいと考えていましたね。

2018年の日本人の死因第1位はがんで、そのうち肺がんで亡くなる方が最も多くなっています。また、肺炎と誤嚥性肺炎の死亡者数を合計すると死因第3位に及びます。

このように、呼吸器の疾患にかかる方は多いのですが、実は専門医の数は消化器内科や循環器内科の3分の1ほどです。呼吸器内科の常勤医師がいない総合病院もけっこうあるんです。小児科医・婦人科医が足りないことが問題になっていますが呼吸器内科も医師不足なので、私が開業して10年経っても潰れないのはそのためかなと思っています(笑)。

「いい呼吸」とは

よく「いい呼吸とはどんな呼吸ですか」と質問されます。呼吸は①鼻呼吸と口呼吸、②浅い呼吸と深い呼吸、③胸式呼吸と腹式呼吸に大別することができます。

①鼻呼吸と口呼吸では、やはり鼻呼吸がいいですね。鼻呼吸は鼻毛のバリアがあるので、ウイルスや花粉などの抗原をキャッチして体内に入らないようにしてくれます。さらに、鼻から吸った空気は加湿されるので、のどの線毛が乾燥しにくく免疫の働きを邪魔しません。

口呼吸は多くの空気が吸えると思われがちですが、鼻呼吸の方がのどの奥が開くので呼吸が深くなってたくさんの空気を吸えます。息を吐き出すのは鼻でも口でも構いません。

②浅い呼吸と深い呼吸では、深い呼吸の方が酸素と二酸化炭素のガス交換率が高くなります。

浅い呼吸はガス交換率が悪いので、体内に取り込める酸素量が不足して体の隅々にまで十分に行き渡りにくくなります。すると、体は呼吸数を増やそうとしますが、これが交感神経を刺激して体を緊張させてしまうのです。

③胸式呼吸と腹式呼吸では、深い呼吸ができるのであればどちらでもいいと思います。腹式呼吸は副交感神経を優位にするので、リラックスしたいときにおすすめです。

長引く咳が増えている

私の医院では、かぜの診療は基本的にお断りしています。かぜは上気道炎と呼ばれるのどや声帯から上の炎症で、耳鼻咽喉科が得意としているからです。

呼吸器内科はのどより下の気管や肺といった下気道を専門としていて、「のどを診る」といっても扁桃の一部しか診ることができないのです。

診察に来られる患者さんには、長引く咳で困っている方が多くいらっしゃいます。かぜの後2週間以上咳だけが続く状態は、もはやかぜではありません。長引く咳の原因で最も多いのが、慢性的な炎症で気道が過敏になって起こる「咳喘息」です。暖かい部屋から寒い屋外へ出ると咳が出る、お風呂やラーメンの湯気、冷たい空気といったちょっとした刺激で咳込むという方は、気道が過敏になっています。

長引く咳の方が増えている背景には、気道過敏を増幅させるアレルギー疾患の増加やストレス社会などが関係していると思います。そのため、ストレスが多い患者さんは治療してもなかなかよくなりません。

特に冬はかぜやインフルエンザにかかりやすく、気道が傷ついて過敏になり咳が出やすい季節です。そのまま春の花粉の飛散時期を迎えると、アレルギー反応によってますます気道に炎症が起こりやすくなります…

...続きは遊和36号でご覧ください。

大谷義夫さん

PROFILE

大谷 義夫(おおたに よしお)

医学博士、日本呼吸器学会専門医・指導医、日本アレルギー学会専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医。
1963年東京都生まれ。1989年群馬大学医学部を卒業。九段坂病院内科医長、東京医科歯科大学呼吸器内科医局長、同大学呼吸器内科兼任睡眠制御学講座准教授、ミシガン大学留学を経て、2009年に池袋大谷クリニックを開院。『名医のTHE太鼓判!』(TBS系)、『スッキリ』(日本テレビ系)、『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)をはじめ、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌等でも活躍。
著書に『長引くセキはカゼではない』(KADOKAWA)、『長生きしたければのどを鍛えなさい』(SBクリエイティブ)、『逆流性食道炎を自力で防ぐ』(扶桑社)ほか多数。

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