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この人に聞きたい 「座りすぎをやめることが寿命を延ばす」 早稲田大学スポーツ科学学術院教授・博士 岡浩一朗さん

今回は「座りすぎが健康を損なう」と警鐘を鳴らす、岡浩一朗先生を取材させていただきました。先生の研究室には座りすぎを防ぐためのスタンディングデスクや立ち心地のよい床マット、バランスボールチェアなどがありました。さまざまなデータを用いたお話を伺って、座り続けることのリスクを改めて理解することができました。


岡浩一朗さん

運動の研究者として

学生時代にバスケットボールをやっていたこともあり、将来は体育教師になろうと思っていました。しかし、大学の先生が楽しそうにしていたり、始めたばかりの研究は伸びしろがあって魅力的だったりしたので、大学の教員を目指すようになりました。

私の関心は人の行動で、専門は健康行動科学です。「運動すると元気になる、健康になる」というのは多くの研究から分かっていますが、それでもなかなか取り組めない人は多いです。

その理由には、運動は1日2日やらなくても特に何も起こらないことが挙げられると思います。食事は食べなければ空腹という刺激がありますからね。さらに、運動は生涯にわたって習慣的に取り組んでいくべき行動でもあるため、運動を始める・継続させるというのはとても難しいことだと認識しています。

座る時間が世界一長い国

運動不足が健康に悪いというのは周知されていますが、「座りすぎ」が健康に与える悪影響はまだあまり知られていません。立ちっぱなしを勧めるのではなく、長時間座っていることが問題なのです。

日本人は世界で最も長い時間座っているというデータがあります。世界20か国の成人を対象にした調査で、日本人の平日の座位時間は世界最長の7時間であることが明らかになったのです。私たちが40~64歳を対象に行った調査でも、座位時間が1日8~9時間となる人が多くいました。

読書や音楽鑑賞、おしゃべりは「心の健康」によい活動ですが、一方で座位時間を長くしやすい面もあります。そして、最も座位時間を長くするのがテレビの視聴で、60~70代では1日平均4~5時間テレビを見ているようです。

また、現代では子どもの座位時間も長くなり、昔に比べて歩数も半減しています。せっかく公園に行っても、ブランコに座ってゲームをしているんですよね。勉学以外での座りすぎは、学業成績の悪化に関わることが分かっています。

運動習慣がある人は「自分は大丈夫だ」と思っているかもしれません。しかし、必要な運動量を満たしていても座位時間が長ければ早期罹患・早期死亡につながってしまいます。運動しているからといって座りすぎてもいいわけではないのです…

...続きは遊和35号でご覧ください。

岡浩一朗さん

PROFILE

岡 浩一朗(おか こういちろう)

1970年岡山県生まれ。1999年、早稲田大学大学院人間科学研究科博士後期課程を修了。2004年より東京都健康長寿医療センター研究所介護予防緊急対策室主任を経て、2006年より早稲田大学スポーツ科学学術院に准教授として着任、2012年より現職。
近年は欧米で先行している座りすぎの健康被害に関する研究の第一人者として脚光を浴び、NHK「クローズアップ現代」「あさイチ」、日本テレビ系列「世界一受けたい授業」など座りすぎの弊害に迫った特集にて解説者として出演。
著書に「長生きしたければ座りすぎをやめなさい」(ダイヤモンド社)、「座りすぎが寿命を縮める」(大修館書店)がある。

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