なごやかに すこやかに 遊和 yuwa 体の健康は「置き薬で」 心の健康は「遊和」で・・・

この人に聞きたい 姿勢・呼吸・雑談力で柔らかな心身を 明治大学文学部教授 齋藤孝さん

今回は新しい教育スタイルの研究やテレビ番組での解説、多くの著作活動にエネルギッシュに取り組んでおられる齋藤孝先生にお話を伺いました。分刻みのスケジュールでご多忙の中でしたが、取材を通して、先生の誠実で真摯なお人柄を感じました。先生の書斎の本棚に並ぶたくさんの本には圧倒されそうでした。


齋藤孝さん

現代人の身体がおかしい

私は日本で一番大事なのは教育だと思っています。言葉は思考と情緒のベースですから、美しく力強い日本語を大学生だけでなく世の中全体に伝えたいと感じてきました。 2001年に『声に出して読みたい日本語』を企画して出版しました。この本をきっかけに、NHKのEテレで放送されている子ども向けの番組『にほんごであそぼ』に、総合指導という立場で関わることになりました。また、昔からスポーツや武道をやっていたことや、呼吸法の研究をしていたこともあって、言葉だけでなく、身体を基盤にした教育を行ってきました。

日本はすばらしい身体文化を持っていましたが、戦後以降は急速に衰えてしまいました。生活スタイルが激変したこともありますが、戦後の教育が伝統的な文化を継承することなく、廃れるに任せてしまったためです。その結果、現代は集中力のない子供、気力のない若者、疲れやすい大人が多くなっていると思います。

気力や集中力を支えるのは身体です。坂本龍馬の時代はそんなことは少なかったでしょう。幕末から明治までは伝統的な身体感覚がしっかり保たれていたからです。

龍馬の写真を見てみると、肩の力は抜けていますが、背筋は自然に伸びています。この座り方が日本人の理想的な座り方の好例だと私は考えています。よい姿勢というと胸を不自然に張ることがあります。しかし、腰が安定すると、その上にのっかるだけの上体には余分な力は入りません。この姿勢は腹で深い息をすることで可能になります。

幕末の吉田松陰たちは平気で長州(山口県)から江戸(東京都)まで歩いていましたし、龍馬だって四国の山を越え、あちこちに行きました。歩くことから腹力、呼吸力が鍛えられていたわけです…

大勢の小学生にも教えてきましたが、勉強の得意な子や集中力のある子たちは息を長く吐くことが得意です。反対に、集中力のない子すぐにプハッとなってしまう。ところが、その子たちに長く息を吐く練習をさせていくと、勉強に飽きるタイミングが遅くなっていくのです。

ご高齢の方も息が長く吐けるようになると、徐々に意識がはっきりしてくるのを実感してもらえるでしょう…

...続きは遊和25号でご覧ください。

齋藤孝さん

PROFILE

齋藤 孝(さいとう たかし)

1960年、静岡生まれ。明治大学文学部教授。
東京大学法学部卒業。東京大学大学院教育学研究科博士課程等を経て現職。
専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。
2001年に出した『声に出して読みたい日本語』(草思社・毎日出版文化賞特別賞)がシリーズ260万部のベストセラーになり日本語ブームをつくった。
著書に『身体感覚を取り戻す』(NHK出版・新潮学芸賞)、『読書力』(岩波新書)、『質問力』(ちくま文庫)、『呼吸入門』(角川文庫)など多数。

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