年齢性別を問わず悩んでいる人が多い便秘。松生先生は大腸内視鏡検査の専門医であり、これまでにも多くの患者さんを救ってきた便秘解消のスーパードクターです。今回は東京都立川市にある先生のクリニックを訪ね、診察でお忙しい中、貴重なお昼休みの合間にお話をお聴きしました。

便秘外来を開業
松生クリニックでは便秘外来を開設していますが、私が勤務医時代には大腸の内視鏡を専門としていました。内視鏡センターに10年勤め、年間2万人を医師5人で診てポリープを取っていました。
ところが、内視鏡で腸内を見るとポリープが無いのにもかかわらず、便秘などの症状がなかなか消えないという人が結構いました。それをどうしたらいいかということで、医院長の勧めもあって食事療法を始めるようになりました。
現在、500~1000万人程の便秘の人がいます。最近の傾向として10~20代の患者さんが多く、便秘症になったのは小学生の頃からだという人が少なくありません。
2013年に大手製薬メーカーと共同で小学生の排便の実態を調査したところ、排便が毎日ない子どもが半数以上の52.6%という結果で驚きました。現代の腸の不調は、子どもの頃から始まっていたのです。
下剤に頼りすぎない
国の統計を見ても、便秘の症状を訴える人は下痢よりも非常に多いです。
便が一日出ないと、つらくなってつい下剤を飲んじゃうんですよ。ところが、センナなどの刺激が強い下剤を長期間飲んでいると、飲むのを止めたときに腸が動かなくなってきます。時々飲むのは構いませんが、長く飲み続けている人は便秘が治りにくくなります。
便秘外来には、一回の服用量が2錠の市販の下剤を50錠や100錠も飲む人が来るんですよ。それも10代、20代でね。最高で600錠なんていう人もいました。
今はインターネットでいくらでも簡単に下剤が買えてしまう、とんでもない時代です。私の所にはどこにも行き場がなくて困って来る人が多くいます。ひどくなる前にどうすればいいのかという話ですね。
下剤の中でも、マグネシウム製剤は作用が穏やかで比較的安全なので、必要があれば使っています。ただ、高齢者や幼い子どもにとっては腎臓の負担になる場合があるので、半年~1年に一度は腎機能と血中マグネシウム濃度を測定した上で使っています。そうでないと危ないんです。
特に、幼い子どもは血液検査ができないので、私はマグネシウム製剤を使いません。欧州では子どもの便秘にはオリゴ糖を使っています…

PROFILE
松生 恒夫(まついけ つねお)
1955年 東京生まれ
1980年 東京慈恵会医科大学卒業
1983年 東京慈恵会医科大学 第三病院内科助手
1994年 松島病院大腸肛門病センター 診療部長
2003年 松生クリニック
著書は「新オリーブオイル健康法」(講談社)、「『排便力』をつけて便秘を治す本-専門医が教える『便意リハビリ』」(マキノ出版)、「腸は絶対冷やすな!(光文社新書)、「『腸を温める』と体の不調が消える」(青春出版社)「オリーブオイル・ハンドブック」(朝日新聞出版)など。