濡れたムクドリ

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濡れたムクドリ



雨の降り続く午後、ふと窓を開けると電線に一羽のムクドリが止っていた。

したたる雫を気に病むこともなく、静かに、じっと雨に打たれ続けていた。

僕なら? 冷たくてイヤだと思うか、風邪を引きたくないと不安に思うか。

ムクドリは、濡れながらも遠い景色に思いを馳せているかのように見えた。

田植えを終えた水盤のような田のことを、緑に覆われた葡萄の畑のことを。

ちいさな頭で、ちいさな体で、しかし、思いの先は僕より遥かに遠かった。



ほどなくして雨は上がり、ムクドリは軽やかに青い空の中へ飛んでいった。

田植えを終えた水盤のような田をめざし、緑に覆われた葡萄の畑をめざし。

どこへとも続く青い空の中に消えていった。


 

雨上がりの幸せ

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雨上がりの幸せ


バケツをひっくり返したような夕立のあと、南の空に大きな虹が架かった。

車を脇に止めて歩道に立ち、携帯のカメラに虹を収めようと空を見上げた。

気がつくと、僕の周りはちょっとした人だかりができて、皆が雨上がりの

空を見上げて立ち止まっていた。大人も学生も、ちいさな子供たちもが…。

「ほら、見て。虹よ」「ほんとだ!きれい」「メールで教えてあげなきゃ」

よく見ると、散歩中の犬までもがつられて不思議そうに空を見上げている。

この楽しい気分は一体なんだろう…。この幸せな気分は一体なんだろう…。

最上級の楽しさや幸せというのは、老若男女が一緒に味わえるものなのだ。

腰の曲がった婆さんが腰を伸ばして虹を見る。雨でずぶ濡れの学生たちも

くしゃみをしながら虹を見る。面倒な仕事に疲れていた僕も虹を見ている。

目が合うと皆が微笑む。どんなテレビドラマも映画もかなわないと思った。

虹が薄くなるのを見届けて、皆がそれぞれの行き先へと笑顔で歩き出した。

 

ちちんぷいぷい


ちちんぷいぷい



幼い頃、冷たいものを食べすぎてお腹が痛くなると
母親が押入れの中から薬箱を出し、赤くてちいさい
つぶつぶの薬をいつも飲ませてくれた。


大きなつぶの薬はのどにつかえて飲みにくいけれど
この赤くてちいさな薬は水と一緒ににスッと飲めた。
のどを通っていくのが楽しいくらいに。


横になったぼくのお腹を、母親はやさしくさすって
「ちちんぷいぷい 痛いの痛いの飛んでいけ~!」
と、笑っておまじないをかけてくれた。


母のおまじないと赤い薬は不思議なほどよく効いた。


友達とけんかをして泣きたくなったとき、ほんとは
お腹なんて痛くないのに、ぼくは母にお腹が痛いと
うそをつき、少し甘えてみたくなった。


「ちちんぷいぷい 痛いの痛いの飛んでいけ~!」
母親のおまじないを聞くと、お腹のすこし上にある
胸の痛みもうそのようにスッと消えた。


お腹が痛いと言うぼくを見て、赤い薬が必要なのか
必要でないのかを、母親はちゃんとわかってくれた。
母の笑顔とちちんぷいぷいと、赤い薬。


幼いぼくを元気にしてくれる、魔法のセットだった。

 

道化師(ピエロ)

サーカス団がやってきた
華やかなパレード、鮮やかな曲芸
みんながみんな、ワクワクした

いよいよサーカスが始まった
玉乗り・火くぐり・綱渡り
みんながみんな、ドキドキした

そこに道化師(ピエロ)がやってきた
スッテンコロリン、スットントン
みんながみんな、大笑い


けれども・・・・・・


子供たちはだれも笑っていない
中には泣いている男の子もいる
一人の少女がお母さんに聞いた

「ねえママ。ピエロさんはなんで悲しいお顔をしているの?」


         作者名「少年」

裏山

裏山が汗をかいている

春風がとても暖かいからだ

裏山が泣いている

厳冬から開放されるうれし涙だ

裏山が笑っている

雪がとけ思わず口元が緩んでいるからだ

春はもうすぐそこ

ほら、鳥たちも楽しそうにさえずっているよ


             作者名「少年」